私と痔 ②

 

とうとう来た手術の日
お父さんが病院まで車で送ってくれた。

 

少し前に胃腸炎にかかっていたことで体力が弱まり、蕁麻疹が出てしまっていた。

 

 

少し体が怠い気がする。

 

自分ではそれが緊張からなのか、ただ体調があまり良くないのかよく分からなかった。

 

 

待合室は相変わらず叔父さん率が高い。

 

時々若い人を見ると、私だけじゃないんだなぁっと思えた。

 

今日も椅子には座れない。

 

「あぁ〜、この子は重症で座れないんだなぁ」ってきっと思われているんだろうなっと思うと恥ずかしかった。

 

 

この小さな病院に手術するところなんてあるのかな〜っと思っていたが、

診察室みたいなところでやるらしい。

 

もっと施術服みたいなのを着せられるのを少し期待してたが、それもなくそのままの服でやるみたいだ。

 

 

まず60代くらいの近所のおばちゃんのような看護師さんが点滴を腕にしてくれた。

 

点滴の針でさえビビっていた私に

「大丈夫よ〜。先生上手だからね〜。
偉いね〜」

と沢山の優しい言葉をかけ励ましてくれた。

 

このおばちゃん看護師さんが居なかったら多分乗り越えれなかったと思う。

 

 

ズボンとパンツを下ろし、うつ伏せ状態になり、腰の下にタオルみたいなのを入れて腰を突き出すような恥ずかしい体制にさせられた。

 

またカムテープらしきもので右のお尻は右側に
左のお尻は左側に固定され、

今までにないくらいオケツが2つに割れた。

 

多分モーセ海を割った時くらいレベルで割れてたと思う。

 

 

手術の準備が出来ると、先生が来て

「咲いてるね〜。」
っと花を見ているかの様なコメントをした。

 

つい私も見たくなって、
「えーどうなってます?」って聞いたら

まさかの病院のデジカメで写真を撮って見せてくれた。

 

消してくれるのかなっと少し心配になったが、っま、顔写ってないしいいっかっという気持ちになった。

 

 

注射を何本もお尻に打たれた。

 

これがかなり痛かった。

 

私があまりにも怖がるので、
先生が「もう止める?」

っと恐ろしい事を言ってきたので

「どうぞやってください」っとお願いした。

 

麻酔がしっかり効いていたので、施術中痛くは無かったが、今体にメスが入れられていると思うと恐怖で体が震えた。

寒気がしたので、看護師さんに毛布をかけてもらった。

 

 

「先生、血圧が下がっています!」

よく医療系ドラマとかで聞くセリフがやつが、まさか自分の事で言われるとは思ってもみなかった。

 

血圧がある一定より下がる度に看護師さんが
「血圧下がっています!!」っとキレのある少し大きめな声で叫ぶ。

 

どうやら普通の人より血圧が下がっているらしい。

 

しばらくすると手術の様子を見ていたおばちゃん看護師さんが「えっ!?」っと言った。

 

気になって、
「どうしたんですかー?」っと聞いたが、

 

「先生は一番いい方法で施術してくれてるからね〜大丈夫だよ〜」

っと言って詳細は教えてくれなかった。

 

 

「はい、終わったよ〜。今までで一番気を使ったよ」

っという先生の声にすごく安心した。

 

 

あー、これで私ももう痔主じゃないんだ!!!
この長い長い苦しみから解かれたんだ!!!!
万歳!!!!

 

先生が「落ち着いたら診察室にきてね〜」と言った。

 

 

少しそのまま施術室で休ませてもらった。

 

長年連れ添った相棒の顔が見たくなり、

看護師さんに「取ったものを見せてもらえますか?」っとお願いして、見せてくれることになった。

 

診察室に戻ると施術の経緯を先生が話し始めた。

「えーっとまずね、今のあなたの体調の事を考えて、今回は全部取りませんでした。」

 

その言葉に雷が落ちた様なショックを覚えた。

なんなら、今から這いつくばって手術台に登ってお尻突き出してでも先生に残りの全部を取って欲しいという思いだった。

本当に今日で全部解決すると疑わなかったので、頭が真白になりその後の説明は良く覚えていない。

 

 

先生銀色のトレーを持ってきて、ブツを見せてくれた。

 

先生が「もう血が抜けて、ふにゃふにゃしちゃってるけどねー」と言った。

 

梅干しみたいだ。これがずっと私を苦しめていたのか….。

なんて考えているうちに

 

ゔっ。気持ち悪い….。吐きそう。

 

「先生、吐くかもしれないです」

 

と言うと、急いで駆けつけてくれた看護師さんの腕の中で意識を失った。

 

 

気付いたら診察ベットの上に寝かされていた。

先生と看護師さんで一緒に運んでくれたらしい。

 

とんだ好奇心から招いた結果がこれだった。

 

看護師さんは、冷凍庫から氷を持ってきて食べさせてくれた。

 

ほんと申し訳ない。

 

そう、私は血が大の苦手なのだ。
でもまさか自分の体の一部をみて倒れることはないと思っていた。

 

 

私が診察ベットを占領していたので、

次の患者さんは施術台で診察を受けることになったらしい。

 

隣から「今日はこっちなんですね〜」っという男性の声が聞こえた。

 

「そうなのよ〜。可愛らしいお嬢さんがそちらで休んでるのよ」

 

うぅ。なんか少し複雑な気持ちになった。
多分若いのに可愛そうに…っと憐まれただろう。

 

 

しばらくして容態も大分落ち着いてきたが、

 

心配した看護師さんにお父さんに電話してきてもらう様に勧められた。

 

 

万面の笑みで診察室にお父さんがやってきた。

そんなお父さんに先生がさっき撮った写真をお父さんに見せた。

 

えぇー!!見せちゃうの?っとビックリもしたが、もうこの際どうにでもなれっという気持ちになった。

まさかこの年になってお父さんにケツの穴を見られるとは思ってもみなかった。

 

その写真を見たお父さんの笑顔が、心配と哀れみで一杯の顔に変わった。

 

先生はもう一度、注意事項をお父さんにも説明してくれた。

 

診察室から出ると、おばちゃん看護師さん、受付の看護師さんまでが

「お疲れ様です。よく頑張ったね〜っ」と励まし送り出してくれた。

 

 

まだ麻酔が効いていたので、助手席に座って家に帰った。

 

 

つづく…

 

 

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